
コロナウイルス関連・テレワーク関連の銘柄が突如急騰した昨今ですが
もしかすると今度は短期就労関連が来るかも?ということで、
今回はアルバイトタイムス(2341)について調べてみました。
無料求人情報誌『DOMO』の編集・発行を行っており、東海地方を主戦場として事業展開している会社です。
4月14日に、東証1部上場の巨塔・光通信(9435)がアルバイトタイムス株の大量保有報告書を提出(5.03%)。
これを受けて、株価は急騰は前日比+37.88%。ストップ高の大盛り上がりとなりました。
会社概要・事業内容
- 設立:1973年
- 東証JASDAQ上場
- 時価総額:61億円
- 従業員数:181人(連結。社員のみ)
- 主な事業内容:
無料求人情報誌『DOMO(ドーモ)』の編集・発行
求人情報サイト『DOMO NET(ドーモネット)』の運営
求人情報サイト『JOB(ジョブ)』の運営
紙媒体の求人広告を駅構内など人目につく箇所に広く設置。
求人会社から広告掲載料をもらうことで利益を得るビジネスモデルとなっています。
会社名の通り、求人の内容としてはアルバイトや派遣などの非正社員向けにウエイトを高く置いています。
この求人誌『DOMO』については求人フリーペーパーの草分け的存在で、一冊でその土地の情報を事細かく網羅しており
広い範囲で豊富な選択肢の中から探すことができ、かつ見落としがないと評判のようです。
現在はWeb媒体でも求人サイトを強化育成中となっており、徐々に割合は増加中。
事業フィールドは発祥地の静岡県を主軸とする東海3県がメイン。
首都圏でも展開していましたが、2010年に紙媒体の供給は停止し
それ以降首都圏ではWeb版の『DOMONET』のみの取り扱いになっています。
競合他社・会社の強み
求人業界なので、同業他社はたくさんあります。
求人という大きな括りで考えると
- 人材派遣大手のリクルートホールディングス(6098)
- 求人情報サイト大手のエン・ジャパン(4849)
- 人材総合サービスのパーソルホールディングス(2181)
あたりがまず挙げられるでしょうか。
正社員・非正社員関係なく、全国の求人情報を広く網羅しているため
これらの会社に真っ向から太刀打ちしようとしても厳しいでしょう。
また、アルバイトタイムスと同様に、アルバイト情報に強いと言えば
アルバイトの『バイトル』等、ネット特化で求人情報を提供しているディップ(2379)が挙げられます。
あちらは乃木坂46を使って大々的にCMをするなど、知名度では完全に同社の上を行っています。
上記の会社とアルバイトタイムスとの差別化ポイントとして現状挙げられるのは、
- 特定の地域に特化している
- 配当利回りが高め
あたりですかね。
東海地方、特に発祥地の静岡県では他の大手ライバルでもかなわない程の圧倒的なシェアを同社が持っている点については立派な強みです。
そういうしっかりした事業基盤が確立されていれば、新しいチャレンジもしやすい状態になるでしょう。
また、配当利回りについてはここ数年ずっと3%超えの実績を継続しています。現在は3.78%。
ここ数年の下落トレンドがさらに配当利回りの数値を吊り上げた、という理由もあるのですが
同社の想いとして、利益は成長への投資というよりも、株主還元に重きを置いているような印象を受けます。
(配当性向は50%を目処にしているとのこと)
リーマン・ショック後については無配当になった時期もありましたが、
現在は自己資金比率88.9%の無借金経営。
財務状態としてはかなり健全ですので、少しくらいでは配当を減らされることはなさそうです。
株価推移
アルバイトタイムス 月足チャート
上場からの株価推移です。
2002年12月のJASDAQ上場から2005年4月までは、
- 非正社員向けの求人広告の需要の高まり
- 情報の無料化が急速に進展
など好材料が揃ったことが買い支えになり、株価は順調に伸びていきました。
この間に勢いに乗り、
- 大阪に進出しDOMOの大阪版の発行
- 求人情報サイト『DOMONET』の開設
など、事業を拡大していきました。
しかしそれ以降、トレンドは急変。
主力のDOMOはなんとか収益が上げていたものの、頭打ち感が徐々に顕著になってきました。
DOMONETはなかなか軌道に乗らず、人件費や販管費がかさみ、利益を圧迫。
さらに、首都圏で2006年に創刊した「maido!DOMO」が完全に同社の足を引っ張ってしまう形に。
そんな状態で業績がモミモミしているうち、2007年にあのリーマン・ショックが来てしまったため
企業の採用意欲が急減し、同社は完全に崖っぷちに立たされました。
その後数年に渡って株価は低空飛行。
2010年には・・・
- 役員報酬の50%減額
- 従業員のボーナスをカット
- 希望退職者の募集(101名の応募)
- 臨時従業員の削減
という、まさにどん底の状態に陥っていました。
事業の見直しを迫られ、2009年10月にDOMOの大阪版を休止。
2010年6月には終始利益に貢献できていなかった「DOMO」首都版の発行を休止。
途中、上の項で紹介したディップと代理店契約を締結し
首都圏エリアにおいて期間限定で相互販売できるようにするなどして懸命に窮地を乗り切り、なんとか景気の大底を抜けています。
その後はアベノミクスにより企業の採用意欲も徐々に回復してきたことで、同社も少しずつ業績が上向いてきましたが
特にそこから急拡大することもなく、ほぼ横ばいの状態が今に至るまで続いています。
以上の通り、同社も他の求人関連銘柄の例に漏れず、景気の善し悪しに非常に影響を受けやすい特徴があります。
今後の展望
コロナウイルスが猛威を振るっている現在、企業活動が一気に制限され
業績悪化はこれからどんどん表面化していくでしょう。
それは、例え今すぐにコロナが終息したとしても、すでに避けられない時期にまで来ています。
業績が悪化すれば、各企業は、経営を成り立たせる為ある程度の人員のスリム化を迫られます。
結果、リーマン・ショック後にもあったような大規模のリストラ、派遣切りが行われるかも。
そうなれば、企業の採用意欲は一気に失われ、求人の需要はおそらく一時的に蒸発するでしょう。
同社にとってはまたしても試練の時です。
ですがその後は、収入源を失いお金に困った人達が
短期でもいいからとにかくすぐにお金が欲しいということで、短期バイトを選択する動きが強まるかも知れません。
企業側としても、高給取りな社員よりもとりあえず一時的に人手の穴埋めをしてくれるパート・アルバイトを
優先的に補充したくなる時期が来るのではないでしょうか。
また、それでなくても会社員の平均年収はどんどん低下していっている昨今。
一昔前とは違い、副業を許可している会社もチラホラ出てきている関係で
空いた時間に第2の収入を求めるサラリーマンが増えてくることも十分に考えられます。
よって、短期就労の求人は今後需要が伸びてくる要素が十分にあるのでは?と考えています。
そんな中、同社が再燃するために必要な要素としては、以下のようなことを期待しています。
このあたりがもし実現できれば、現在低迷している株価が急回復することもあり得ます。
- コロナウイルスが一刻も早く終息し、全国の企業活動が本格的に再開される。
- DOMONETをさらに軌道に乗せ、紙媒体からWeb媒体へと徐々にシフト。販管費を積極的に削減する。
- 属性・業種に特化した求人やリアルイベントにてマッチングサービスを行うなど、景気回復期に発生する多種多様な求人需要を一気に取り込めるよう今から地盤を固めていく。
- 地の利は今後も存分に活かし、静岡県をメインとする東海地方では今後も他社の追随を許さないよう注力する。
幸いにも経営状態は悪くない同社ですので、配当金をもらいつつ株価が長期的にゆるやかに回復していくまで
じっくり株を保有しておくのもいいかも知れませんね。
もしくは短期就労関連の銘柄が思惑により一時的に高騰したりするのか。
分かりませんが、先日少々打診買いした分の監視も含めて、しばらくの間注視しておこうと思います!